入船亭扇治通信(第92回)   

2012年 04月 30日
 長く厳しい冬、噺家になってこんなに春の訪れが待ち遠しかったのはいつ以来でしょう。皆様、お変わりございませんか。
 さて人生も半ばあたりまで生きてきて、最近一つ悟った事があります。それは、「人間 腹が減ると不機嫌になる」という真実。そんなの今さら言わなくたって当たり前とおっしゃるかもしれませんが、私は結構食いだめのきくたちで、空腹が耐えられない辛抱出来ないとは、あまり思った事がありません。むしろのべつ満腹でない方がお酒が美味しくいただけるので、検査入院中の師匠が食事が遅いと家に帰ってきてしまったと聞いた時は、いくらなんでも大人げないんじゃないのというのが正直な感想でした。
 家族でホテルのビュッフェにお出かけすると決まったら、必ず元はとってやろう向こうに損害を与えてやろうと2・3日前から食事を控えて臨んだりしたものです。
 それがこの1・2年、やたら小腹が空いたり炭水化物を無性に欲する事が増えてきました。身体に何処か不調があるかもしれないので近いうちに診てもらおうとは思っていますが、年齢的なものというのは、やはりあるのではないでしょうか。昔ほど体力がないと、エネルギー不足が即応える…
 先月末も、浅草演芸ホールの夜席から帰って愚妻と晩酌をする機会が何度かありました。以前なら馬鹿っぱなしをしながらチビチビ、夜遅くまでやってて平気だったのが、その時は「いつまでのんでんだこいつは。早くおまんまにしてくんねえかな」と、次第に不機嫌になっていく自分がわかるのです。これが年を重ねるという事なのかなと、しみじみ思った次第です。
 まあ、いつまで若い気でいないで年相応にしなさいという天の声もあるのでしょうが、日々変わっていくのもまた人の常。懊悩と葛藤の青春時代が歳月と共に懐かしい想い出になるように、あの頃は腹が減ってのべつおまんまをの事を考えてた。まだまだ、若かったんだなあ…とファミレスで孫達がハンバーグやチョコサンデーをパクパクやってるのを横目に、玉子とじうどんをもてあましながら思う日が来るのでしよう。あまり肩肘張らない程度に、悔いのない毎日を送りたいものです。

 木の芽時、皆様もお身体お大事になさって下さい。
扇治拝
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by irifunetei_senji | 2012-04-30 00:00 | 入船亭扇治通信