朝夕は冷え込むことが多くなってきました。いかがお過ごしでしょうか。
とは言ってもいまのところ例年より暖かい日が続き、あまりお酉さまといった感じがしないのは私だけでしょうか。今年は29日まで11月中に酉の日が3回ありますが、昔から言われている「三の酉の年は火事が多い」実は統計的にはそういう数字は残っていないそうです。三番目の酉の日があるということはそれだけ押し詰まって冷え込んでいるから、火の元に気をつけるようにという戒め。浅草鷲神社のお酉さまにかこつけて吉原遊びを楽しみにしている亭主連中を牽制するため、江戸の女房たちが言い出したもの。鳥は時を告げるところから天変地異を知らせる存在とも言われ、その日がひと月に3回巡ってくるのは何か起こるのではという俗信などから来ているのではと言われています。
今年の暮れはどんな陽気になるかまだ分かりませんが、一足早い大晦日気分を味わっていただこうと28日の二人会では久々の『芝浜』をかけさせていただきます。三代目三木助から扇橋に受け継がれた、我が一門にとっては特別な1席。師匠も生前数えるほどしかやっていないと思いますが、放送局やホールからの要望で高座にかける時は必ず前もって谷中の三代目の墓前で「芝浜をやりますので、師匠どうぞお守り下さい」と手を合わせておりました。
今年7月に旅立った扇橋の墓は故郷青梅のかなり奥まったところにあるようで、自ら「遠いから、俺の墓参りなんぞお前たち来なくていいからな。来りゃ来たで俺にかこつけて、どうせまた一門で大宴会やるのが楽しみなだろうから」と言ってました。さすがに師匠、弟子のことをよくわかってます。
まあ、底が抜けるほど吞むかどうかは別として12月に入ったら空いている弟子たちで墓前に伺う予定です。私の方はその前の『芝浜』ですから、無精を詫びつつうちから西の方に手を合わせるだけで勘弁してもらい、でも師匠の教えを胸に甦らせつつ大切に演じようと思っております。
その前哨戦というわけではありませんが、21日の黒門亭でもやはり三木助→扇橋ラインの大作『三井の大黒』でトリを務めます。ここで、ブログをチェックして下さった方だけにお得なお知らせ。21日黒門亭第2部限定でお配りする案内状を28日の二人会にご持参いただくと、2016年落語協会カレンダーをプレゼント!28日は行かれないんだよなぁというお客様、21日のご案内状はもちろんご家族・お知り合いの方にお渡しいただいて結構ですので、皆様の賑々しきご来場心よりお待ち申し上げております。
入船亭扇治